この記事では、ShopifyとBaseについて徹底比較を行っていきます。ShopifyもBaseも、どちらもECサイト(オンライン通販サイト)を作成できるサービス。ですが、料金や機能、特徴などにさまざまな違いがあります。
そこで今回は、ShopifyとBaseの違いについて比較を行い、どちらを選ぶべきか、選び方やおすすめの条件などを解説していきます。
Shopify(ショッピファイ)とは
Shopifyとは、ECサイトを構築・運用できるプラットフォームです。175か国260万ショップ以上に導入されている、世界規模のECサイト構築ツールとなります。
従来、ECサイトを構築するためには、サーバーを用意し、自社開発でECサイトを作り上げるか、「ECパッケージ」と呼ばれるWEBソフトウェアを導入することが一般的でした。しかし、これらの方法では規模により数千万円規模の導入費用が掛かるほか、維持管理にも多額のコストを必要とし、中小企業にとってはハードルの高い方法でした。
一方Shopifyは、そうした自社開発よりも圧倒的に導入のハードルが低くなります。サーバーはもちろん、ECサイトのひな型(テンプレート)も用意されており、サービスの利用登録をするだけで、すぐにECサイトのデザインや商品登録など初期設定をはじめ、ショップをオープンできます。
また、費用に関してもサブスクリプション(月額課金制)で利用でき、14日間の無料期間の後、ベーシックプランであれば月額29ドルと安価になっています。
ShopifyはグローバルなECサイト構築ツールですが、日本語にも対応しています。また、多言語・多通貨に対応しており、海外発送もできるため、越境ECにも向いています。
このように、ECサイトの自社開発より容易に構築できるShopifyですが、デザイン面・機能面ともにカスタマイズ性に富んでいることも大きな特徴です。公式ストアに公開されている「テーマ」を使えば、高品質なデザインがサイト全体にすぐに適用されます。また、「アプリ」を導入することで、口コミレビューの投稿機能や、SNS連携、WEB集客、マーケティングなど、さまざまな機能を追加することも可能です。
自社内にITエンジニアやデザイナーがいなくても、こうした基本的なカスタマイズを行うことができます。また、アウトソーシングのエンジニアやデザイナーに依頼し、初期構築やリニューアルの際だけ高度なセットアップを行い、運用に関しては自社のみで行う、といった方法も可能です。
またShopifyは、ECサイト運営だけに留まらず、オムニチャネル対応など、サイトを越えた幅広い連携も可能となっています。ECサイト、SNS、さらには実店舗での在庫状況や販売情報、顧客情報なども一括で管理できるため、リアルとオンラインとをシームレスに統合できる魅力があります。
決済に関しても、クレジットカードやApple Pay、Google Payといった多様な手段に対応しており、こちらもShopify POSによって実店舗との連携も可能になっています。
BASE(ベイス)とは
BASEとは、Shopifyと同じく、ECサイトの開設・運用ができるサービスです。こちらは国内企業であるBASE株式会社の提供するシステムとなっており、ショップ数は140万店舗以上とされています。
こちらも従来のフルスクラッチ開発(自社開発)やECパッケージの導入と異なり、アカウント登録のみで利用できる簡易さが人気の理由の一つとなっています。サーバーを契約する必要もなく、ECサイトの運営に必要な機能がオールインワンで標準装備されている点も共通しています。
また、デザイン・テンプレートが豊富に用意されており、洗練されたデザインを簡単に適用できる点なども、Shopifyと似ていると言えるでしょう。また、BASEにもShopifyと同様「アプリ」と呼ばれる拡張機能があり、必要に応じて機能を追加することも可能です。ただし「アプリ」の充実度に関しては、BASEよりもShopifyのほうが豊富になっています。
またBASEの場合、料金体系にShopifyとの違いがあります。基本的な費用は無料ではありますが、購入成立時に「BASEかんたん決済」手数料や、サービス利用料などがパーセンテージで発生する仕組みになっています。運用の固定費が掛からないと見ればメリットですが、販売に対する手数料によって商品の利益率が下がるとも言えるため、一長一短と捉えて良いでしょう。
BASEの特徴としては、どちらかといえばECサイトの初心者や、ITスキルに自信のない個人運営のショップに向いているサービスと評価して良いかもしれません。初心者向けのサポート支援体制が整っていることや、固定費無料で利用できる点など、参入しやすい印象があります。「BASE U」というECサイト運営のノウハウ情報配信サービスなども用意されています。
一方で、より高度な機能や柔軟なカスタマイズ、実店舗とのシームレスな連携、本格的なマーケティングなどを必要とする場合は、機能に不足が生じる可能性もあります。こうした特徴から、ECサイトの入門者がまずBASEで運用をはじめ、事業規模の拡大に伴ってShopifyに移行する、といった利用パターンも考えられます。
ShopifyとBASEの料金・手数料の比較
BASE | Shopify | ||||
スタンダード | グロース | ベーシック | スタンダード | プレミアム | |
初期費用 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
月額費用 | 無料 | 5980円 | 29ドル | 79ドル | 299ドル |
決済手数料 | 3.6%+40円 | 2.9% | ※Shopifyペイメント利用時 | ||
3.4~4.15% | 3.3~4.1% | 3.25~4.05% | |||
振込手数料 | 一律250円 | 一律250円 | ※Shopifyペイメント利用時は無料 |
このほか、以下のような費用が発生します。
<BASE>
・サービス手数料
⇒スタンダードプラン:3%
⇒グロースプラン:無料
・事務手数料
振込2万円未満の場合:500円
<Shopify>
有料テーマ、有料アプリなどを使用する際、それぞれに応じた費用が発生
ShopifyとBASEは比較するとどちらが安い?無料のBASEのほうが「高くつく」ケースも
ShopifyとBASEの費用を比較すると、スタンダードプランを無料で使えるBASEのほうが、安くてお得なように見えるかもしれません。
「Shopifyは月額費用が掛かるのでハードルが高い」
「BASEは無料プランがあるのでハードルが低い」
といった評判もあるようです。ところが、一見すると確かにその通りに思えますが、実際には事情により異なります。BASEの無料プラン(スタンダードプラン)は、決済手数料に+40円の固定費が発生するためです。
つまり、月に商品が100個以上売れる場合、BASEの無料プランによる決済手数料は、3.6%の割合部分に加えて、40円×100個で4000円になります。
Shopifyの最安値プラン(ベーシックプラン)の月額固定費は29ドル(約3900円)のため、月に商品が100個以上売れる場合、BASEの無料プランよりも、Shopifyのベーシックプランのほうが安くなることになります。
従って、「月あたりの販売個数が100個を超えるか否か」を一つの基準とし、100個未満であればBASEのスタンダードプラン、100個以上であればBASEのグロースプランか、もしくはShopify、と考えるのも、選び方の基準の一つになるでしょう。
ShopifyとBaseを比較すると、どちらを選ぶ方が良い?おすすめの条件とその理由
ShopfiyとBaseには、それぞれ違った特徴があります。それぞれの特徴や相違点を把握しながら、どちらを選ぶべきか検討していきましょう。
Shopifyの特徴
Shopifyの特徴は、豊富なカスタマイズ性です。
デザインを変更する「テーマ」や、拡張機能を追加する「アプリ」も、Shopify公式だけでなく、世界中の企業が積極的に参加して開発・提供に取り組んでおり、各種さまざまなバリエーションが豊富に揃っています。
たとえば「アプリ」であれば、どんな業種でもおなじみの口コミ・★評価を投稿する機能から、請求書やラベルなどを簡単に作成できる機能、検索エンジン対策やWEB広告運用など集客アップの機能、さらにはカレンダーで来店予約や施設・設備の利用予約を受けるなど、さまざまな展開を作ることができます。
こうした豊富なカスタマイズ性があるため、どのような業種でも、「Shopifyに適さない」ということは通常ありません。アパレル、食品、雑貨、書籍、家具、家電、デジタル機器、カー用品といった物販はもちろん、電子書籍や動画・画像などのデジタルコンテンツ販売、さらにはオンライン・コースを作成してスクールやレッスンを提供するといったことも可能になります。
これらの幅広いカスタマイズ性と高機能性が、Shopifyの大きな特徴です。
Shopify Expertsによる導入・運用支援
一方で、Shopifyはカスタマイズ性が高いことから、相応のスキルや経験がないと使いこなせず、初心者向けではないといった評価もあります。確かにこれは、一面では事実でしょう。
といっても、あくまでノーコードツールのため、WEBサイト構築やプログラミング、WEBデザインなど、エンジニアリング的な技術がなければまったく使えない、という意味ではありません。そうした専門知識が無くても、一定程度は扱うことができ、ECサイトを構築・運用することは可能です。
ただし、実現したい機能が増えてきたり、機能やデザインを高度にカスタマイズしたいと考えた時に、相応の専門知識が必要になることも事実です。そうした場合のために役立つ、Shopify Expertsという制度も用意されています。
Shopify Expertsは、Shopifyの正式な認定を受けた、高度な専門性を持つ企業や技術者です。こうしたShopfiy Expertsの支援を受けることで、自社内にShopifyの専門家がいなくても、高度な技術を必要とするさまざまな支援を受けることができます。(なお、弊社もShopify Expertsの一社として認定されています。)
そのため、たとえばミニマムなスタートで、まずは自社でShopifyを運用しながら課題を洗い出したり、新しい展開のアイデアをブラッシュアップし、次にShopify Expertsに依頼して高度な機能を実装する、といった流れも可能になります。
Shopifyがおすすめできる条件
業種としては、いずれのケースでもShopifyはおすすめできます。高機能でカスタマイズ性にも優れるため、幅広い業種に対応できるためです。一方で、豊富なアプリやテーマ、カスタマイズなどを十分に使いこなすためには、相応の専門性が必要になるのも確かです。また、Shopify Expertsに構築を依頼する場合も、それなりの依頼費用が発生します。
こういった点から、あくまで事業としてしっかりとECサイトを運営し、利益を出していく前提での運用が望ましくなるでしょう。逆に言えば、個人の趣味レベルや、あまり事業を大きく拡大させない前提のマイクロビジネスでECサイトを運営したい場合は、Shopifyはスペック的にもコスト的にもオーバーかもしれません。
ただし、Shopifyが個人事業者に向かないわけではなく、たとえば個人経営店やフリーのクリエイターなど、事業として継続的に取り組んでいる場合は、決してShopifyがオーバースペックということにはならないでしょう。
「Shopifyは無料プランが無いため、初心者にはオススメできない」という意見もありますが、ベーシックプランなら月額29ドルです。個人の趣味や副業としては割高かもしれませんが、事業経費としては割安と言って良いでしょう。
Baseの特徴
Baseの特徴は、とにかく導入のハードルが低く、誰でも手軽に利用できる点です。
スタンダードプランは固定費が無料となっており、本格的な初期投資を必要とせずに、最低限のECサイト運営をスタートできる点が魅力の一つとなっています。
機能やデザインに関しても、他社に見劣りしない十分なものを備えており、必要に応じてある程度のカスタマイズも可能となっています。また、こちらもプログラミングなどの知識や技術を必要とせず、簡単にECサイトを構築できるようになっています。従って、費用面・機能面ともに、「これから事業をはじめたい」といった初心者の方でも入門しやすいツールだと言えるでしょう。
一方で、より高度な機能やデザインを必要とする場合や、自社ならではのECサービスを展開したい場合など、さまざまな点で限界が生じてしまう可能性もあります。事業者が本格的にEC事業に参入する場合や、将来的なEC事業のスケールアップを考える場合は、後々、他のECサイト構築ツールに移転するか、はじめからShopifyでスタートするのも手段の一つです。
また、初期費用や月額費用は無料ではありますが、決済手数料や振込手数料は発生します。特に無料プランの場合、3.6%に加えて40円の固定費用が決済ごとに発生するため、商品の利益率はそのぶん低下してしまいます。完全無料で使えると考えていると、意図と違った結果になってしまうため、注意が必要です。
BASEがおすすめできる条件
BASEも幅広い業種に対応しており、一般的な物販系ECサイトであれば、いずれの業種でも問題ないでしょう。導入しやすさと、固定費用が無料のプランがあることから、個人の趣味レベルやマイクロビジネスにも適したツールとなります。
たとえば、「本格的にEC事業を営む予定はないが、趣味の手作り品をネットで販売したい」といった場合や、将来的な独立起業を目指して試験的にECサイトを運用してみたい場合、また、toB主体の事業者が副次的に直販を行いたい場合など、小回りの利く低コストなECサイトを運用したいケースに適したツールです。
総合的に比較した場合、ShopifyとBASEはどちらを選ぶべきか
ShopifyもBASEも、どちらも違った特徴があるため、一概に「こちらの方が良い」「こちらを選ぶべき」と言うことは適切ではありません。事業規模や将来への見通しなど、さまざまな点を総合的に勘案して、個別の事情に合わせて選択していくべきでしょう。そうした前提の上で、あくまで参考の一つとして、ShopifyとBASEの、それぞれの選び方を箇条書きでまとめていきます。
<BASE(ベイス)>
・月の販売数が100個未満
・一般的な物販系の商材を扱いたい
・とにかく手軽さを重視したい
・個人の趣味の延長や、試験的にECサイトを運用してみたい場合、toB主体の事業者が副次的に直販を行いたい場合など
こうした場合は、BASEが適した選択肢となるでしょう。
<Shopify(ショッピファイ)>
・フルスクラッチの自社開発に匹敵する、高機能なECサイトを構築・運用したい
・一般的な物販だけでなく、デジタル・コンテンツや予約受け、オンラインコースなどを扱いたい
・機能性やカスタマイズ性を重視
・EC事業に本格的に参入したい、将来的に本格的な事業としてスケールさせたい場合
こうした場合は、Shopifyが適した選択肢となるでしょう。
このほかにも様々な観点があるため、一概にこの基準で選択すれば間違いない、という話ではありません。あくまで参考として捉えていただければと思います。